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とある山の本との出会い

とある山の本との出会いを恥ずかしながら文章にしてみました。
長いですのでお暇な方はお付き合い下さい。


そう、その本は下の方の棚に横になって押し込まれていたのだった...。

それは会社の帰り道。
少しだけ残業で遅くなった日だった。
ふと、この時間でもやっているあのお店にたまには寄っていこう、なんとなくそう思ったのだった。

そのお店は駅から少し遠い。
そのせいか、2、3度だけ立ち寄ったことがあるという程度だった。
それに前にそのお店に寄った時は、それほどは自分の好きなジャンルの本が置いていない、と思えた古書店だった。
でも、古い本などもあるから、もしかしたら良い本に出会える、そんな期待を抱かせてくれる古書店だった。

駅からお店までとことこ歩いていく。
途中には料理店などがあり、まだ夕食を取っていないのでその香りにつられそうになった。

ようやくお店に着いて、外の棚を見る。
いくつもある棚を丹念に見ていくが、残念ながら買いたいという本は無かった。
棚の後はショーウィンド。
ショーウィンドに飾られていたある本は、買ってみたいと思ったが、
サイン入り本で、それなりの値段が付いていて思わずため息が出た。

若い女性の店員さんが外に出てきた。
何を思って古書店の店員さんになろうと思ったのだろうか。
このお店は文学系の本が充実している店である。
やはり文学が好きなのだろうか。
そんなことをふと考えながら、中に入る。

入口あたりにある本から見始めた。
あまり時間を掛けると帰りが遅くなる。
面白そうな本がいくつか見つかる。
本田勝一さんの本が何冊か置いてある。
でも、今日は違う作家の本を買いたかったのだ。
特に引き出して値段を見るような事はなく、そのまま素通りする。

文庫本も充実している。
でも、今日は文庫本はスルーだ。

前はほんの少ししか置いてなかった山の本の棚の前に来る。
これからがわくわくする一時なのだ。
そう、よい山の本と出会える瞬間なのだ。

目の高さから本を見ていく。
古書店で目の高さあたりにある本は、一番売りたい本、またはアピールしたい本が多いのだ。
並べ方ひとつで本の売り上げが変わるそうである。

いくつかの本が目に留まる。
余裕があったら買ってみたいけど、たぶん自分は読まないなぁ、とか、
あんまり興味がない本だなぁ、という本が並んでいた。

下も見てみよう。
足下に近い所の棚まで本が入っている。
下の方は山の本ではなくて、動物や植物の本が並んでいた。
前に古書展で見たけど買わなかったな、とか、興味はあるけど自分のライブラリに追加するのは相当先だなぁ、
という本が並んでいた。

やっぱり今日も買おうと思う本はないか。
さて、次の棚に移ろうか。

ん、ちょっと待てよ。
見落としがあるかもしれない。
もう一度見てみようよ。

再度棚に目を通す。
やっぱり無いなぁ、と思った、その時。

そう、その本は下の方の棚に横になって押し込まれていたのだった...。

そのタイトルが見えた瞬間、ピピッと頭の中で何かが鳴った。
この一年ほど、買いたいと思ってずっと探していた本だった。

そんなにレアな本ではない。
インターネットで買えばわずかな金額で買える本だし、何冊も検索にひっかかる本である。
でも、その本は古書展で見掛けたことは滅多になかった。

以前に二度だけ見たことがある。
最初に古書店で手にした時、その時は値段が高かったので、諦めて棚に戻したのだった。

そして、二度目は古書展だった。

あっ、あの本がある!
そう思ったとき、自分の前にいた人が棚に手を伸ばしたのだった。
お願いだから、その横の本を取って!!!
その願いも虚しく、その人が手に取ったのは、やはりその本だった。
そして、その本の見返しを開いて、値段を確認している。
後からなので、ちらとしか見えなかったが、相当安い値段のようだった。
その人は声は出さなかったが、「よし。」といった顔つきで、うんうんと一人で頷き、
そして、他に持っていた本の上にその本を載せたのである。

悲しい思いで他の棚を探してから再度その棚に行ってみたが、
本一冊分の隙間がそのまま空いたままになっていて、何か空虚に思えた。
でも、他の人も買いたいという本である。
だからやっぱりいい本なんだな、と再認識した出来事だった。

そんな事があったので、次に見つけたら必ず買う、そう思っていた本だった。

横になっていた本をおもむろに棚から取り出す。
箱入りの本なので、箱からさらに本を取り出し、裏の見返しにある値段を確認する。
でも、そこには値段は書いておらず、別な古書店のシールが貼ってあった。
そして、箱を見ると値段が書かれていて、衝撃的な値段だった。
古書店シールがあるから、かなり安い値段で引き取られたのだろう。
わずかにシミがあるが、それ以外はまったく問題がない本だった。

レジへ持って行き、精算する。
こんなに安くていいんですか、なんて言おうかと思ったが、止めておいた。
店員さんが笑顔で「ありがとうございました。」と渡してくれる。
それを澄ました顔で受け取り、お店を出る。

道路に出たところで、小さくだが、思わずガッツポーズ。
そんな山の本との出会いだった。

あえて書名は書かないことにしました。
些細な出来事ですが、なんとなく自分には大きな出来事でした。

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コメント

よかったですね!!

ぅぉぉぉーヽ(゚ω゚ )ノヽ( ゚ω゚)ノヽ(゚ω゚ )ノぅぉぉぉーヽ( ゚ω゚)ノヽ(゚ω゚ )ノ ぅぉぉぉー

今回の運命の出会いのために、前回があったのですね。オメデトウございます★

投稿: cyu2 | 2009年4月25日 (土) 21時46分

cyu2さん、こんにちは。
こんなろくでもない長々とした文章を読んで頂いてありがとうございます。
とってもラッキーな出来事でした。
いろいろな本を読んでいると、影響を受けたのか何か自分も書きたくなって、書いてみました。

古書との出会いは一期一会。
レアな本の場合は、その時を逃すと、もう会えないこともあります。
ただ最近は、この経済状況やいろいろな事情で古書を売り払う人が増えたせいか、
以前ならまずお目にかかったことのないような本が安く売られたりしています。
ある値段で買ったら、次の時にその半分ぐらいの値段で売られていたりすることもあったりします。

結構、古書展は紹介したような小さなバトルが楽しいです。
先日も自分が棚に戻した本を直後に来た人がすぐにゲットしていきました。
でも、おじさんが多いので古書の匂いより体臭のきつい人がいたりするのが嫌な感じですが。(笑)

投稿: リブル | 2009年4月25日 (土) 22時34分

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