尾崎喜八氏の本

尾崎喜八詩文集5 雲と草原 尾崎喜八著

創文社の一冊。自分が手に入れたのは昭和34年の初版本、尾崎喜八氏のサイン入りでした。後書きにありましたが、この本では「雲と草原」「詩人の風土」の大半、「麦刈の月」「美しき視野」の一部からなるということです。

やはり、尾崎喜八氏の文集では感嘆符を使った文章が印象的です。「~よ!」で終わる独特の文章は、他の人ではまねの出来るものではありません。情感たっぷりの風景の描写と小鳥の鳴き声の描写、それらを含めて、とてもゆったりとした時間が流れていて、いつ読んでいても、古き良き時代を感じさせてくれるとてもいい文章になっています。

「雲と草原」では最初にある「美ヶ原」、それに続く「秋山川上流の旅」「神流川紀行」などなど、頑張らない山歩きと山村やそこに住む人達との交流などがとても爽やかであり、今のあまりにも早すぎるスピードの世の中とはとても対称的で、こういう時代だからこそ、このような本を読んで欲しいというような気になってしまいます。

以前に読んだ「山の絵本」でもそうでしたが、やはりこの本の中でも、見知らぬ山村の子供達にリンゴなどを分け与えたり、いい人ぶりが発揮されているのはもちろん、「少女の日」では、子煩悩ぶりがよく出ているような印象を受けます。やはりよい父親でもあったようです。

尾崎氏のエッセンスが詰まった本でした。

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尾崎喜八詩文集4 山の絵本 尾崎喜八著

創文社の一冊。山の本にのめり込み始めた最初の頃に買った本は文庫本の「山の絵本」でしたが、詩文集にももちろん入っています。同じ内容かと思っていましたが、実際に読むと大筋は同じですけど、微妙にところどころ違います。文庫本にする際に少し手を入れたり、割愛した部分があるのでしょうね。

いつもはさらっと読んでしまうのですが、久しぶりなので今回はスローペースで読んでみました。文字を追いながら自分が歩いた時の事も踏まえてイメージしながら丹念に読むと、章題にある「絵のように」の通り、まさに目の前に壮大なイメージが彷彿するのです。これはやはり尾崎氏ならではの言葉をよく吟味した文章ならではだと思います。

「一日秋川にてわが見たるもの」の中では、今はなき大久野まで列車に乗り、勝峯山の麓の「浅野セメント会社」を見学し、馬頭刈山に行く話があります。その冒頭で「多くの人は見ずしてあげつらい、且つ結論する。私は見て初めて知り、そして言う。」と書かれています。ついつい、いろいろな報道などを目にしている所で、このような一文がとても心に残りました。

やはりこの本はまた何度でも開く事になるのでしょうね。

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尾崎喜八詩文集3 花咲ける孤獨 尾崎喜八著

創文社の一冊。詩文集の三番をつけるこの本は全7冊予定の時の最後の刊だったようです。自分の購入した本は尾崎氏の謹呈サイン入りの初版本でした。前にも書きましたが、自分はあまり詩は読まないので批評はできないけれど、とてもよく自然を表現しているようです。

知らなかったのですが、挿入されていた月報に串田孫一氏が書いていました。また各巻の表紙および箱にある小さなお花の絵は串田氏が書かれたようです。初めて知る事柄が多く、なかなか興味深いものでした。

たまには詩を読んでみるのもいいなと思った本でした。

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名もなき季節 -富士見からの手紙- 尾崎喜八著

創文社の一冊。購入したものは昭和51年の初版でした。この本は昭和21年から27年頃のごく私的な書簡を集めたもので、若い友人の伊藤海彦氏、串田孫一氏、娘の栄子さんに宛てたものだそうです。わずか70ページ弱の本ですので、あっという間に読めてしまいます。

読んでみると、敗戦直後の苦しい時代を生きていた尾崎氏の苦しい状況がやはり内容にも現れている気がします。以前の著書の解説を読んだ中では、戦争賛美者のレッテルを貼られて、自分自身もかなり苦悩していた時代があったようですが、まさにこの時がそうだったのでしょう。しかし、読み進むと時間の経過と共にだんだんと切迫した状況から尾崎氏特有の持ち味が生きた文章になってきているような気がします。

誰にでも勧められる本ではありませんが、尾崎氏に興味のある方は探して読まれてみてはいかがでしょうか。

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さまざまの泉 尾崎喜八著

白水社の一冊。やはり尾崎氏の本には目が行ってしまい、買い込みました。非常にしっかりした本で読んでいて気持ちよくなるというのはこういう本でしょうか。1962年から1964年に書かれたものをまとめたのがこの本のようです。山の本というよりは自然の本というべきでしょうか。

まずは音楽随想から入ります。その後は「一年の輝き」となっていますが、これは自然手帖に書かれた内容のようです。まだ自然手帖は読んだことがありませんでしたが、やはり尾崎氏らしい自然に関するあふれるばかりのその内容は、読んでいるだけであたかも自然の中にいるような感じがします。やはり特に鳥の鳴き声の描写は本当に素晴らしいの一言でしょう。

最後の方には「自然と共に」という題でしっかり和田峠や塩尻峠を歩く話や奥日光、奥武蔵などの話が入っています。

やはり美しい自然を感じられる本でした。

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尾崎喜八詩文集2 旅と滞在 尾崎喜八著

創文社の一冊。尾崎氏の本が続いてしまいました。これも詩集編で、「行人の歌」「旅と滞在」「高原詩抄」の全作品と「此の糧」「同胞と共にあり」の一部がとりあげられています。

「行人の歌」では、二才で亡くした自分の子供の事を詩っています。2ページほどの詩ですが、どんな気持ちでこの詩を詠んだのでしょうか。

「旅と滞在」では、山の詩がいくつも出てくるようになります。「三国峠」「神津牧場」「八ヶ岳横岳」など、山などをタイトルとした詩も見られます。「山麓の町」では、秩父のある町を題材にしていて気に入りました。武甲山や鳥首、笠山などが出てきますが、おそらく外秩父の駅あたりから見た風景を元に作られたのではないかと想像しています。

「高原詩抄」では、あの有名な「美ヶ原溶岩台地」が入っています。自分が美ヶ原に初めて行ったのは、小学生の頃。その時は朝は濃い霧で何も見えず、それが美しの塔あたりまで行ったら、急に晴れ上がって、青空と素晴らしい景色が広がったあの感動は今も忘れません。世界の天井が抜けたかと思う、という表現はまさにその通りと思うような本当に素晴らしい表現です。ああ、これを書いていると、また美ヶ原に行きたくなってしまいます。

「此の糧」「同胞と共にあり」では、やはり戦争時代の暗い雰囲気が漂い、兵隊や軍隊を賛美するかのような詩が入っています。意にそぐわない詩でも、そのように書かないと検閲され、下手すると牢獄送りになる時代ですから、仕方がなかったのかもしれません。そのせいか、後書きでやはり尾崎氏も戦争賛美者としての烙印を押されたが、戦争によってうまい汁は吸わなかった、と書いています。

「旅と滞在」「高原詩抄」はたまに取り出して読みたくなりそうです。

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あの頃の私の山 尾崎喜八著

二見書房の一冊。自分が探した時はこの本をあまり見掛けなくて、ネットで安い物を探して購入しました。でも、その後何度か安い本を見掛けました。でも買って後悔するような本ではありません。

尾崎喜八氏の本を読んだ限りでは、そんなに気張った山歩きではなく、ごく普通の山歩きが多いようです。その代わりに、詩人の尾崎氏らしい感性の文章が読み手を惹き付けます。いずれの文章を読んでも何かゆったりというかのんびりというか、時計の流れ方がまったく違うような気がするのです。この本はいいとこどり、という感じで、「山の絵本」「雲と草原(くさはら)」「詩人の風土」「碧い遠方」「夕映えに立ちて」「いたるところの歌」からの散文と「高原詩抄」「花咲ける孤独」からの詩が集められています。

なんと言っても読んで見たかったのは「神流川紀行」でしょう。万場が登場する山の案内書といえば必ず出てくる一首「父不見御荷鉾も見えず神流川 星ばかりなる万場の泊まり」が書かれた文章です。西御荷鉾山に登ったようですが、山登り自体よりも、万場に至る鬼石からの行程の方が自分的には面白く感じられました。

他にも「美ガ原溶岩台地」「神津牧場の組曲」「秋山川上流の冬の旅」「信州峠」などなど楽しい文章が盛りだくさんでした。見つけたら買いの一冊だと思います。

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尾崎喜八詩文集1 空と樹木 尾崎喜八著

創文社の一冊。これは詩集からなっていて、初期の頃の「空と樹木」「高層雲の下」「曠野の火」の三冊から構成されているようです。

普段、自分は詩集をあまり読んだことがないので、批評するような事はできないのですけど、やはり古き良き時代の雰囲気がよく出ている気がします。どちらかというと山の事を詩にしているものは少ないようで、四季の移り変わりや武蔵野などの自然を印象的に詠んでいるようです。

印象的だったのは、やはり「野の搾乳場」でしょうか。武蔵野という言葉が出てきますので、家からさほど遠くない所にあったのでしょう。それをイメージしながらこれだけの詩が書けるのですから、素晴らしいと言わざるを得ません。この文章を思わず真似したくなったというのは確かに頷ける話ではあります。

詩人である尾崎氏を知るためには、やはり重要な本ではないでしょうか。

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山の絵本 尾崎喜八著

尾崎喜八氏の名作です。これも今でも手に入る本です。読まれた方も多いのではないかと思います。

非常に雰囲気を大切にしているようで、本当にその場にいるような臨場感あふれる書き方をされています。蝶を追ったりする記述など、自分が何か子供の頃に戻ったような気がしながら読むことができました。「大蔵高丸・大谷が丸」については、先日、ほぼ同じ軌跡を辿ってみました。これを読むと、今でもあまり変わらない部分の記述もあって、とても忠実に書かれているなと思いました。

その上、やはりいい人である、という印象を受けました。なぜかというと、とても人の親切に対して素直に感動していることがよく書かれているからです。例えば、「蘆川の谷」の中で薦められたが行ってみると感じの悪い宿の後、お爺さん、お婆さんのあまり良くないと思われていた宿が行ってみるととても親切だった時、「恩寵に恵まれた人よ」といった記述があります。山の本を読んでいて、こうした人の親切などに感動したことを書いている本はあまり見掛けたことがありません。このような記述ができるのは、やはり素晴らしい人である、という気がしました。

この本が出た当時、特に若者に人気が高かったということですが、よく分かるような気がします。今でも素晴らしい本です。他の本もぜひ手に入れて読んでみたいものです。

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