旅の本

秘話ある山河 岡田喜秋著

平凡社ライブラリーおよび日本交通公社からの本。平凡社ライブラリーの方を買ってずいぶん積ん読状態でしたが、久しぶりに取り出して読んでみました。ご本人の後書きにありましたが、平凡社ライブラリーの方は一部差し替えがあり、3篇が除かれ、他の本から6編が追加されていました。せっかくなので取り除かれたものも読みたいと思っていたところ、たまたま元の本の出物があったので購入しました。

読んで見ると単純な旅の紀行ではまったくなく、その土地にまつわる話などを取り上げて、さらに調べ上げている所がやはり素晴らしい所です。1960年代に出版された本ですから、今ではだいぶ状況の変わっている場所も多いでしょうけれども、今でも充分に読み物として通用すると思います。

印象に残った話としてはやはり先頭の「道南・山中の十字架」でしょうか。砂金の取れた昔、山の中に集落があり、そこでキリシタンが迫害された歴史があるという話です。元々、キリシタンが迫害されていた当時、北海道までは害が及ばないだろうと紛れ込んでいたが、結局、百人以上も獄門にかけられてしまうという事件になってしまったようです。大千軒岳の麓にある殉教地には今でもなかなか到達するのが難しい場所のようです。

元の本では当時の写真がかなり入っていますが、平凡社版では自然を写した写真が中心になってしまって、時代を意識させる写真が少なくなっています。人を写している写真は再度取り上げるのは難しいのでしょう。やはりこういう所は、原本を手に入れたいものですね。

なかなか読ませてくれる本でした。

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旅とふるさと 若山牧水著

新潮文庫の一冊。古書店へ行くと思わぬ本に出会うことがあります。この本もそんな一冊で、何気なく文庫の棚を見ていたら旅という文字が見えたので取り出してみました。すると若山牧水とかかれているではありませんか。値段を見てもたいした値段ではありません。それならばと購入してみました。昭和30年の6刷となっています。初版は昭和26年のようです。古いものなのでだいぶ紙が日焼けしているのと、前の人が裏表紙に1955年の日付とローマ字で名前が記入されていました。しかし、読むには特に問題はありません。帯も付いていました。当時の値段\60と書かれているのが、またなんとも時代を感じさせます。

若山牧水というと「みなかみ紀行」を昔読んだことがあります。そのときも酒飲みという印象ですが、やはりこの本の中でも旅館に上がりこんでは酒を注文したりする場面が何度も出て来ます。二合頼んだら、二合だけ買いに行ったよ、なんて思っている場面もあって、やっぱり酒飲みですね。

五篇に分かれていて、父の病気のためにふるさとへ帰った時の話や小諸付近の小旅行記、三浦半島に住んだ時の話、短歌集などになっています。

ふるさとのあたりの話は当時の生活や雰囲気がそこかしこに出てきます。「山の変死人」では自殺した人の話が取り上げられ、暗い感じの時代を感じさせます。「林間の焼肉」では猪を取る話です。山の農村では猪は農作物を荒らす害獣であり、猟をしてみんなで分け与えて食べる場面の描写が生々しいです。「春日の湯」では蓼科山の麓にある温泉に泊まる話です。今も春日温泉という温泉があるようです。そんな温泉での一コマがなかなか楽しい文章です。

思ったよりも旅の話は少ないですけど、小さな紀行文が楽しい本でした。

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